2015年12月6日日曜日

普段は聞けないけれど、本当は知りたい精神科医への疑問を投げかける


今日、このタイトルで、精神科医の先生を呼んで研修を行いました。
やや専門的な内容なのですが、興味のある方は読み進めてください。

精神科医と臨床心理士は、とても近い領域で仕事をしています。ですが、どのようなことを考え、何をしているのか?について、互いに分かっていない点も多々あります。今回の研修がその懸け橋となれば、お互いの理解や、精神科を受診している患者さんへの理解も深まるだろうという考えのもとに企画しました。

質問に答えていただく精神科医として、長年、総合病院の精神科で仕事をされている先生をお呼びしました。その先生が日々の臨床で考えていること、工夫されていることを聞きました。

何か終着点をもった研修ではなく、話が広がり、参加者の連想が広がることを意図した研修なので、まとめるのはなかなか難しいです。なので、僕自身が引っかかったいくつかの事柄を紹介したいと思います。

  1. 話を引き出すことが良いとは限らない

    これは、専門家の間では知られていることですが、統合失調症など、特定の方は話を引き出すことが必ずしも良いとは限らない。統合失調症の主な症状である自生思考は、聞きすぎるとかえって広がってしまう可能性もある。ある時には話を止めたり、広がらないように固めるという関わりも必要とのことです。

  2. 薬は飲み心地を大事する

    薬を処方する際は、飲み心地を尋ねるようにしているそうです。薬を飲む時に、飲み心地を意識している人は少ないかと思います。けれど、そう聞くことで、意識しますし、薬の副作用について患者さんが語りやすくなるための工夫なのだそうです。副作用は、患者さんに語ってもらわなければ分からないことだし、そのように薬の副作用を語ってもらうことは、治療に参加してもらうという点で、とても大事なことなのだそうです。

  3. 症状を対処と捉える

    参加者から、特定の症状についてどう考えるか?との質問がいくつか出されました。その際に、症状をその患者さんが行っている対処と位置づけ、その後の関わりを考えているようでした。もちろん、患者さんはその症状に困って来るのでしょうが、それがその人自身を守っている、あるいは、その人が良くなろうとする力が発揮されている側面もあるという考え方なのだと思います。

  4. 症状の増悪より、雰囲気の変化を見る

    患者さんが良くなってきたかどうかの見極めについて、もちろん症状の増悪というものも1つの指標になっている。けれど、その人の雰囲気がその人自身に合ってきたか?というポイントも大切にしているとのことでした。その人が元来持っている持ち味と、現在醸し出されている雰囲気が合ってきたか?という視点なのだと思います。そして、その視点からも患者さんの回復度合いを見ているようです。

  5. カウンセリングを受けるではなく、取り組む

    臨床心理士との連携についてです。カウンセリングを紹介する際に、患者さんにイメージを聞くと、何らかのアドバイスをもらえるものと考える方が多いのだそうです。確かに、それはカウンセリングの一面を表しているけれど、一面でしかない。カウンセリングでは、自分について考えなければならないし、ある程度継続的な期間を要することもある。それを考えると、患者さん自身の主体性が必要なので、取り組むという言葉の方が実態と合っているだろう、と。細かな説明の仕方ですが、それをすることで、患者さん自身がカウンセリングという場を有効に使うための工夫なのだと思います。

これらの話に共通する点は、患者さん自身の自然治癒力を活かすということなのだろうと思います。そのために、意欲を損なわない工夫をしているように見えますし、一緒に治療に取り組む素地を作っているように見えました。また、症状の中にその人が良くなろうとしている力が発揮されているとの見方も通じると思います。

この点については、精神科医も臨床心理士も、きっと変わらずに大切にしなければならないポイントだろうなと感じました。

講師をしてくださった先生が、研修前に読んでいた本です。
パラパラと見させてもらったのですが、面白そうでしたよ。

対談 精神科における養生と薬物
神田橋 條治 八木 剛平
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2015年11月26日木曜日

なぜ、“嵐”にひかれるのか?


今回は“嵐”にはまっている女性について、こんな特徴があるのかな?ということが分かったので書きます。

僕は、これまで「ジャニーズの特定の人が好き」という人には会う機会があったのですが、「特定のグループが好き」という人には会ったことがありませんでした。嵐を除いては。

嵐にはまっている人には、時々会う機会がありました。もちろん、アイドルグループだし、人気があるのは分かるのですが、何にそんなに惹かれるのか分かっていませんでした。けれども、先日、説明が上手な人と会って、やっと理由が分かってきました。

その人は、それまで特にジャニーズに興味はなかったらしいのですが、ある時、嵐が出ているバラエティー番組を見て、彼らが仲良くやっている様子が目にとまり、何だか惹かれたらしいのです。当時の彼女は、女の子特有の複雑で、気を遣い合わなければいけない人間関係にうんざりしていたらしく、嵐のメンバーが楽しそうにやっている姿が対照的だったんだそうです。そんな時に、彼らの姿を見ることで癒されていたのかもしれない、とのことでした。彼女はその後、色々な番組を見る中で、嵐の中の特定の人のファンになっていったらしいです。

その話を聞いて、納得しました。振り返ってみると、確かにこれまで会った嵐が好きな人も、同じように女の子の複雑な人間関係に嫌気がさしていたような気がします。ですから、嵐に惹かれる人は、日常の人間関係にうんざりしていて、その部分が癒されているのかもしれません。

もちろん、「嵐の魅力はそんなんじゃない!」と言う人もたくさんいるのでしょうが。

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2015年7月21日火曜日

人に疲れたときに、それを癒すものとは


人からの害を受けて疲れてしまった時、それを癒すものは何なのか?もちろん、それぞれ違うので一括りにはできないのですが、ダメージが大きければ大きいほど、人ではなく自然によって癒される方が良い気がします。

何でなのかは明確に出来ないですが、理由の1つは自然が害を与えることはないからだと思います。心を積極的に癒すこともないですが、さらに傷つけることもありません。自然の中に身を置くことによって少しゆとりが出たら、他の人に話をしたり、何かの関わりを受けることでさらに癒されるやり方が僕のおススメです。

そういう意味で、カウンセリングが効果を発揮する時期は、本当にしんどい時をちょっとだけ抜けたくらいなのかもしれません。

このことを書こうと思ったのは、先日、僕自身が北海道に行った際に温泉に行き、癒されたからです。その後、アルコールランプの照明のみの喫茶店で、炎を見ながら一人でぼんやりしたのもまた良かったです。

小樽 北一ホール

僕自身は、春から東京に転居してきたのですが、どこに行っても人が多いし、新たな人間関係を作らないといけないしで、知らずにエネルギーを使っていました。北海道のさわやかな空気や自然にリフレッシュできました。

そんなにダメージが大きくないと思っていたのにとても良いリフレッシュになったということは、もしかしたらダメージの大きさは関係ないのかもしれませんね。

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2015年6月29日月曜日

疲れのサイクル、“3の法則”

新年度がはじまって3ヶ月が経ちました。新しい年度から就職した人、入学した人、異動した人、昇進した人など、環境が変わった人もいるかと思います。そのように環境に変化があると、慣れるまでは、身体も疲れやすいですし、気持ちの方もまわりに気をつかったりして疲れやすいです。

そういう疲れがどっと出やすい時期について、『3の法則』というものがあります。新しい環境になって、3日後、30日後、3ヶ月後にたまった疲れが出てくるみたいです。有名なのは、30日後ですね。ゴールデンウィーク明けくらいに疲れが出やすい時期が来ます。ですから、この頃はなんだか学校に行きたくなかったり、仕事に行くのがだるかったり、気が重くなりがちです。これは、『五月病』と呼ばれていますね。今は、3か月後なので、その次の周期です。

この疲れる感じは、身体のサイクルとしてそうなりやすいので、自然なことです。『この時期は、疲れが出やすいんだな』と頭で分かっているだけで、案外、防げます。みんな自分なりに工夫をするからです。

もし、疲れがどっと出て、何かをするのがだるいとか、気持ちが乗らなくなってしまっても、少しの間耐えていると、力が出てくることが多いみたいです。それでもダメな時、カウンセリングも1つの方法ですよ。もちろん、他にもいろいろな方法はありますけど。



この法則のことを思い出したのは、今年度から僕自身が職場を変えたからです。今ちょうど疲れが出ているのですが、僕の場合は、30日後の方がきつかったですね。

写真は新しい職場で働く直前に時間を作って行った石垣島です。

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2015年4月30日木曜日

人間関係を長続きさせるには

今回は、人との関係を長く、豊かにする方法について書きます。
その方法は色々あるのですが、今回オススメするのはワンパターンをやめるということです。

一昔前に多かった夫婦のあり方として、亭主関白と三歩後ろを歩く妻というのが知られています。しかし、どんな場面でもそれだと窮屈になってしまいます。もちろん、かかあ殿下とそれに従う気の弱い夫という関係も同じです。関係のあり方が一つだけだと、変化が少なくて、面白みが減ってしまうのです。

ですから、普段は亭主関白なのだけど、仕事で上手くいかないときは、愚痴を聞いてもらって慰められたり、奥さんがこだわっているインテリアについては口出しできなかったり。同じ人との間に、様々な関係が作れる方が、豊かで長続きします。もし、誰かとの関係で行き詰まりを感じたら、ワンパターンになっちゃってないか?振り返ってみるといいですよ。そして、少しでも違うパターンも作れるといいですね。

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2015年3月30日月曜日

小さな文句が関係のこじれを防ぐ③

小さな段階で不満を語ってもらう
それではズレが修正されないから駄目なのかというと、そうではありません。そのズレていることを話題にし、相手に思うところを語ってもらうこと自体に意味があるのです。持っている不満を口にしてもらうだけでどこかスッキリするので、ズレは修正されなくてもトーンダウンします。そして、不満があっても言えない関係から、不満があったら言える関係に変化もするのです。その関係が医療者と患者関係において、トラブルを防ぐ関係づくりへと繋がっているのです。

不満を出させないような対応は…
よくトラブルが起こると、そのような不満を言われない完璧な対応を目指します。職業にもよると思うのですが、医療業界のように相手との関係が続く場合は、不満を語りやすい雰囲気が大切だと思います。完璧な対応を目指すと、つけ入る隙がなくなって、かえって不満を言わせないような雰囲気を醸し出してしまうこともしばしばです。

小さな文句を言える関係づくり
具体的に、そのような小さい段階での不満をどのようにして言ってもらうかをカウンセリングの中での関係づくりから考えたいと思います。大きく3つあります。

  1. 小さくても不満を口にした時に、それを丁寧に聞く。そして、それを言ってもらうのが常に役に立つのだと話す
  2. 他の医療機関やスタッフへの不満を口にした際、同じことを自分にも感じる時があると思うから、そう思ったら話してください、と伝えておく
  3. 他のスタッフに対しての不満語った際には、そのスタッフを悪者にはせず、悲しいすれ違いという見方をする

1,2は、不満を語ることに対して開かれた態度を示し続けるということです。しかし、それでも直接本人には言いにくい場合もありますので、3のように職場全体で互いを補いあうことが必要になります。

これらの3つの関わり方は、それほど難しいものではありません。意識しておくだけでずいぶん実践できますので、ぜひ、明日からの仕事に取り入れてみてください。

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2015年3月10日火曜日

小さな文句が関係のこじれを防ぐ②

コミュニケーションがズレやすいパターン
もちろん、トラブルの原因を個人に帰結するわけではないですが、どのようにコミュニケーションがズレやすいか、そのパターンは人によって異なります。様々なパターンがありますから、それらをひとまとめにするのは難しいですが、共通する点は余裕がなくなっているということです。

余裕がなくなってくると、人は幅を持たせて柔軟に考えることが難しくなってきます。思考を狭めて、理由付けがはっきりした方が安心感が得られるからです。そういう意味では、医療を受診する人は、どんな人でも不安があり、ゆとりが少なくなっています。ですから、どんな科においてもコミュニケーションのズレが生じやすいと言えるかもしれません。

コミュニケーションのズレの修正
そのようにズレが生じてしまった際、それを話題にし、互いの考えていたことを語ることで、誤解が解けることがあります。しかし、実際には、それでもズレが修正されないこともあるのです。

誰でも、自分の理解したいようにしか物事を理解しません。自分の物差しで理解することで、自分の心を守っているのです。それを心理学では防衛と言います。誤解を無理に解こうとする行為は、相手の防衛を壊そうとすることになっているかもしれません。


『小さな文句が関係のこじれを防ぐ③』へ続く…
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2015年2月20日金曜日

小さな文句が関係のこじれを防ぐ①

先日、クレーム対応についての講演を依頼されました。依頼した方は、“クレームをつける人は精神的に問題がある”というイメージを持っているようで、精神科で働いている僕のもとに話がきました。

そこで話した内容を、何回かにわけて書いていきますので、良かったら参考にしてみてください。

他罰か?自罰か?
そもそもクレームをつけるという行為は、他罰的な行動です。精神科の患者さんというのは、うつ病に代表されるように、自罰的な人が圧倒的に多いです。自分を責めて、苦しくなっているのですから、“クレームをつけてくる人=精神科患者”というのは、実態と違っていますね。

トラブルは、相互作用で生じる
“クレームをつける人は精神的に問題がある”という考えのように、人間関係のトラブルが生じると、多くの人は、誰か特定の個人が悪いからそのトラブルが生じたのだと考えます。しかし、心理学では、特定の個人の原因と考えるのでなく、コミュニケーションの相互作用の中でそのトラブルが生じていると考えます。つまり、はじめから問題を持った人がいるのではなく、やり取りを繰り返す中で、問題視されるような一面が出てくると考えるわけです。

収集がつかない状態や、埋められない溝ができてしまったと思える状態は、始めはささいなコミュニケーションのズレだったのかもしれません。それが修正されないままにやり取りを繰り返してしまうとき、大きなトラブルに発展してしまいます。ですから、コミュニケーションがズレてしまったとき、早い段階で修正することで、大きなトラブルを防げるのです。


『小さな文句が関係のこじれを防ぐ②』へ続く…

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